元銀行員のソーシャルレンディング投資実践録

元銀行員の立場からソーシャルレンディング投資を主力として投資信託、仮想通貨を含めたポートフォリオ構築を目指します。

スルガ銀行「第三者委員会調査報告書」を斜め読みしました。

第三者委員会の調査報告書の受領と今後の当社の対応について(スルガ銀行)

第三者委員会調査報告書(要約版)(418KB)(スルガ銀行)


(1)抜粋(ソーシャルレンディングにも関係する部分)

賃料収入を多く見せて融資限度額や担保評価額をつり上げるため、中古マンション等について、レントロール(部屋・賃貸スペース別に、家賃・敷金等が記載されているもの)やサブリース契約を偽装する行為が行われていた。

→賃貸収入を多く見せれば担保評価額をつり上げることが可能


・収益不動産ローンの延滞案件のほぼ全てで自己資金確認資料が架空・偽造であったこと。

→自己資金が僅少の状態で借入を行った案件は、延滞の可能性が高まる


・実際にも、シェアハウスローンの一部 127 件を抽出して検証した結果によれば、収益還元法による評価額が積算法に比して平均 1.7 倍高くなっておりシェアハウスローンでは担保実行時に回収ロスが拡大する可能性が懸念される。

→積算法に比べて収益還元法の評価は高い傾向にあり、回収ロスの可能性がある

これはまさに本ブログの過去記事


において指摘している事象が実際に起こっていたということでしょう。


誤解をしてほしくないのは、「収益還元法」それ自体は信頼性の高い評価方法であるということです。

客観的資料に基づいた「収益還元法」の評価は、積算法よりも実態をあらわします。

一方で、収益還元法には「恣意性」が入りやすいというデメリットを覚えておく必要があります。

私は、担保評価をみる際に、「誰がどういう意図をもって評価しているのか」ということを気にしてみています。

ご参考まで、収益還元法と積算法の算出方法の違いについては、物件評価方法(積算法・収益還元法)(Renosy)が簡略化されており、わかりやすいです。
(2)抜粋(銀行のガバナンスに関する部分)

・審査の現場では、審査担当者が否定的な意見を述べたとしても、最終的には営業側の意見が押し通されて融資実行されることが大半であり、資産形成ローンは 2015 年の取扱開始以降、2017 年度上期に至るまで、半期毎の承認率の平均が常に99.0%を超えて推移していた。

高額案件は審査部門が決裁権限をもちます。
一般的に、営業担当者は融資目標が課されるのに対し、審査部門はデフォルトの抑制に目標が課されるので、営業部門とは利益が相反します。これが銀行内部における牽制機能となるのです。
よって、高額だったり難件口を多く抱える審査部門の承認率が99.0%というのは異常値です。


書類は債務者から徴求するよりも、融資の事務処理に慣れている業者から徴求した方が効率的であるから業者からの徴求がスタンダードとなり、行員は債務者と金銭消費貸借契約の締結の際にしか顔を合わせないこととなった。
 業者への審査条件の暴露が盛んに行われ、業者側が審査条件に合うようなエビデンスを偽装してくる工作を行うことを可能にした。

→業者から直接資料を頂くことはよくありました。以前、頂いたコメントへのご返答として、
「銀行にとっても不動産業者から審査書類を、場合によっては銀行の審査しやすい形式でもらうことができます」(銀行の賃貸アパートへの融資姿勢-コメント欄
と記載しましたが、まさか契約の時にしか債務者と顔を合わせないとは信じられません。
 資料のやり取りの中で、業者側も銀行の審査基準を理解し、審査基準に合うように案件を用意してくることはありますが、銀行側が審査条件を暴露し、業者も「エビデンスを偽装する」というのは、かなり悪質です。



今回の問題点は
スルガ銀行の「第三者委員会の調査報告書」が目次だけでお腹いっぱい(市況かぶ全力2階建)にまとめられています。お腹いっぱいできりがないので、個別事象に対するコメントは割愛します。

 創業家一族が 5 代に亘り経営のトップを務めている世襲企業
   ↓
 西に静岡銀行、東に横浜銀行という競合あり、早くからリテール戦略(個人向けローン)を重視
   ↓
(ここまでは良かったのでしょうが、調査報告書に記載の通り)
 強力な営業推進政策
   ↓
 上位者による精神的な圧迫
   ↓
 逸脱行為の組織的な蔓延による規範的障害の欠如/全員共犯化
   ↓
 高業績者の昇進による逸脱行為の更なる促進/正当化認識
  ↓
 高業績による営業部門の増長と管理部門の萎縮

審査部門の権限を営業部門の重役が抑えつけていたことに大きな問題があります。



最後に、同じ業界にいたよしみとしてコメントします。

金融業界なるもの正攻法だけでは戦いづらい面があるのは事実です。

融資実績を伸ばさなければならないし、営業面、審査面についても各担当が工夫を凝らさなければならない面はあります。

全てにおいて清廉潔白な銀行というのも存在しない気がします。

しかしあえて言わせていただきます

「本件が銀行のスタンダードでは全く無い」

と。

そして

「随分と楽な仕事をしているな」

と。

もちろん担当者は必至になって案件を獲得しており、営業自体は決して楽ではないでしょう。

銀行の仕事は、営業による案件獲得から審査を通すまでの一連の流れができてはじめて1つ完了します。

楽をしていると言ったのは、自己資金が用意できない方に対して、偽装された通帳をもって、業者に銀行の審査基準にあった資料を提出させるのであれば、審査を通すのは簡単なことだからです。

そして、審査を通すのが銀行における一番の「キモ」になります。この部分に手間暇をかけていないことを「楽な仕事」と言ったのです。

自己資金が少ない人にも、収支シミュレーションを精査してあげて、場合によっては業者に割高な点等を指摘する等をして、審査を通すというのが本来の仕事ではないでしょうか。


業者から資料も貰い、偽装された資料をもとに案件を組み立てる。

営業偏重の風土があり、周りが同じようなことをやっていれば罪悪感が薄れるのは自明のことです。

全ての責任は、この企業風土をつくりあげた経営陣にあります。

通帳偽装に融資契約額の上乗せに、7%近い高利率の無担保ローンの抱き合わせに、不適切交通費の支給に、ハコと呼ばれる別法人を介しての融資まで果たしてやるかといえば、普通の銀行ならNOでしょう。


生き残りに必死なのはどの銀行も同じです。その中で、安易な方法で他の銀行を出し抜こうとした責任や、価値に見合わない大きな負債を追った顧客に対する責任は重いと思います。



さて、ソーシャルレンディング事業者の皆様におかれましては、決して

「担保評価額をつりあげよう」

などど考えないで頂きたいです。

担保付とする場合は、極力恣意性を排除した評価額を公表してください。

真面目に事業をされている事業者が大半だとは思うのですが、

今まで、投資家を騙してきたソーシャルレンディング事業者がいくつもあったので、あえて記載しておきます。
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